高卒認定試験の難易度は低い?簡単すぎ?独学の場合の合格率とは
2025.05.16
中卒から大学進学を目指す方法のひとつに「高卒認定試験」があります。高校卒業と同等の学力があることを証明でき、最短ルートで進学を目指せる点が魅力です。
「難易度が低い」「独学でも合格できる」といった声もありますが、実際はどうなのでしょうか。
この記事では、高卒認定試験の難易度や独学での合格率を解説しつつ、通信制高校を利用する場合との違いや、それぞれのメリット・デメリットについても紹介します。
高卒認定試験とは
高等学校卒業程度認定試験(通称:高卒認定試験)は、合格すると高校を卒業していなくても、高校卒業と同等の学力があると認められ、大学・短大・専門学校の受験資格が得られる国家試験です。
かつては「大検(大学入学資格検定)」と呼ばれていましたが、2005年に名称が変更されました。この試験に合格することで、正式に高校卒業と同等の学力があると認められます。
高卒認定試験は、さまざまな事情で高校を中退した方や、そもそも高校に進学していない方にとって、進学や就職の可能性を広げる重要な試験となっています。
高卒認定試験の概要
高卒認定試験は年に2回、8月と11月に実施されています。受験科目は必須科目と選択科目に分かれており、全部で最大8科目を受験する必要があります。
試験科目は「国語」「数学」「英語」「理科」「社会」の5つで、「理科」は科目を選択することになります。ただし、高校で1年以上在学していた方は、在学時に単位を修得した科目については免除申請が可能です。
試験の実施は各都道府県の教育委員会が行い、試験会場も各都道府県に設置されています。
受験料は以下の通りに設定されています。
- 7科目~9科目 8,500円
- 4科目~9科目 6,500円
- 1科目~3科目 4,500円
高卒認定試験の難易度
高卒認定試験は大学受験の受験資格を得るための重要な試験ですが、その難易度が気になる方も多いかと思います。一般的に高卒認定試験の難易度は低いと言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは様々な観点から高卒認定試験の難易度について検証していきます。
出題範囲からみる難易度
高卒認定試験の難易度を出題範囲は高校で学ぶ基礎的な内容に限定されています。具体的には高校1年生から2年生前半までの基礎的な内容が中心となり、高校3年生で学ぶような発展的な内容はほとんど出題されません。
例えば、数学では数学Ⅰと数学Aの範囲から出題され、微分・積分などの高度な内容は出題されません。英語も中学校の内容を含む基礎的な文法や読解問題が中心で、難解な長文読解などはありません。
このように、出題範囲が限定されているため、高校の定期テストや大学入学共通テストと比較すると、難易度は低いと言えるでしょう。
合格点からみる難易度
高卒認定試験の合格点は100点満点中36点以上となっており、これは正答率36%で合格できることを意味します。一般的な学校のテストでは60点や70点が合格ラインであることを考えると、高卒認定試験の合格点はかなり低く設定されています。
このことからも、高卒認定試験の難易度は低めであると言えるでしょう。
合格率からみる難易度
高卒認定試験の合格率は、文部科学省の発表によると、近年は全体で70%前後となっています。
科目別に見ると、「国語」「社会」は比較的合格率が高く80%前後、「数学」「英語」「理科」は60〜70%程度となっています。
これらの数字からも、高卒認定試験は決して難しい試験ではないことがわかります。しかし、まったく勉強せずに合格できるわけではありませんので、しっかりとした準備が必要です。
高卒認定試験が「簡単すぎ」と言われる理由
高卒認定試験は「簡単すぎる」という声もありますが、その理由にはいくつかの要因があります。
合格率が高く設定されていることや出題内容が基本レベルに限定されていることから、このような評価が生まれています。ここではその理由について詳しく見ていきましょう。
出題傾向が予測しやすい
高卒認定試験は毎年似たような問題が出題されるため、過去問を解くことで出題傾向を把握しやすいという特徴があります。過去問の分析によって効率的に学習できるため、「簡単に合格できる」という評価につながっています。
また、市販の参考書やオンライン学習サイトも充実しているため、独学でも効率的に対策できることも「簡単」と言われる理由です。
独学での高卒認定試験対策
高卒認定試験は独学でも十分に合格可能な試験です。難易度が比較的低く設定されているため、自分のペースで学習を進められる独学でも効果的に対策ができます。
ここでは独学で合格を目指す方のために、効率的な学習方法や合格率、おすすめの教材などについて詳しく解説していきます。
独学での合格率
独学での正確な合格率についての公式データはありませんが、予備校や通信教育などを利用した受験者と比較すると、独学者の合格率はやや低い傾向にあるといわれています。
しかし、計画的に勉強し、適切な教材を使用すれば、独学でも十分に合格可能です。実際に、独学で合格する受験者も多くいます。
効果的な独学の方法
独学で高卒認定試験に合格するためには、計画的な学習と効果的な教材選びが独学成功の鍵となります。
具体的には以下のポイントを押さえることが重要です。
過去問を徹底的に解く
過去問は出題傾向を把握する最も効果的な教材です。
高卒認定試験に合格するならば、最低でも過去3年分は解いておくことをおすすめします。同じ形式の問題を繰り返し解くことで、出題パターンに慣れ、実際の試験でも落ち着いて解答できるようになります。
基礎から着実に学習する
高校の基礎レベルも不安・触れたことがない場合には、中学レベルの内容から学習を始めるのが良いでしょう。
高校レベルの内容に入る前に基礎をしっかり固めることで、学習効率が大幅に向上し、応用問題も解けるようになります。
苦手科目を後回しにしない
苦手科目こそ早めに対策を始め、時間をかけて理解を深めましょう。
得意な科目から勉強したくなる気持ちは理解できますが、苦手科目は時間がかかるため、早い段階から少しずつでも取り組むことが合格への近道です。
学習計画を立てる
試験日から逆算して、いつまでに何を学習するか計画を立てることが大切です。
漠然と勉強するのではなく、科目ごとに学習する期間や1日の勉強時間を具体的に決めておくと、無理なく効率よく学習を進められます。
独学におすすめの教材
教材の質は合否を分けるといっても過言ではありません。
高卒認定試験の対策には、以下のような教材がおすすめです。
過去問題集
書店やオンラインで購入できる高卒認定試験の過去問題集は、実際の試験傾向を知るのに最適です。
出版社によって解説の詳しさや問題の難易度に差があるため、複数の問題集を解いてみると良いでしょう。特に、解説が詳しい参考書は、独学で勉強する際の強い味方になります。
高卒認定試験向け参考書
高卒認定試験に向けた科目別の参考書も多く出版されています。
参考書を選ぶ際には、自分のレベルに合った教材を選ぶ事が大切です。例えば、高卒認定試験に特化した参考書は学習ポイントが絞られているため、効率的に学習することができます。
また、苦手科目については複数の参考書で説明を比較すると理解が深まります。
無料の学習サイトやアプリ
最近では無料で使える学習サイトやアプリも充実しており、隙間時間を活用して学習するのに便利です。特に、動画で解説しているサイトは視覚的に理解しやすく、難しい概念も把握しやすくなります。
学習サイトやアプリならば、通勤・通学時間などの短い時間でも効果的に学習できるのが大きなメリットです。
高卒認定試験と通信制高校の比較
大学受験資格を取得するために高卒資格を得る方法として、高卒認定試験の他に通信制高校への入学も選択肢の一つです。
両者にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、比較してみましょう。
最終学歴の違い
高卒認定試験に合格した場合も最終学歴は「中卒」となります。これは「高卒認定試験合格」は正式な「高校卒業」とはならないからです。
一方、通信制高校を卒業した場合は、最終学歴が「高校卒業」となり、これは全日制の高校を卒業した場合と同じ扱いになります。
特に就職活動の際には、この違いが重要になることがあります。
企業によっては「高卒以上」という条件を設けている場合、通信制高校卒業の方が有利になることもあるでしょう。
「絶対に進学したい!」という考えが無い場合には、通信制高校の卒業がおすすめです。
取得までの期間と費用
高卒認定試験は最短で半年程度で合格することも可能です。受験料も3科目以下であれば4,500円程度と比較的安価です。
通信制高校を卒業するには、3年以上の在籍、74単位以上の修得、30時間以上の特別活動が必要です。ただし、前籍校での在籍期間や修得単位が加算されるため、転入・編入の状況によっては最短1年程度での卒業も可能です。
費用は学校によって大きく異なりますが、年間10万円〜50万円程度かかることが多いです。
学習環境と支援体制
高卒認定試験は独学で学んだ場合、自己管理能力や学習意欲が求められます。わからないことがあっても、すぐに質問できる環境が整っていないことが多いでしょう。
通信制高校では、スクーリング(対面授業)やレポート提出などがあり、教員からのサポートを受けられます。また、同級生との交流もあるため、モチベーション維持にも役立ちます。
進学する場合のメリット・デメリット
大学や専門学校への進学を考えている場合、高卒認定試験合格者も通信制高校卒業者も受験資格は得られます。
ただし、通信制高校では調査書(内申点)が発行されるため、総合型選抜入試や推薦入試で有利になる可能性があります。一方、高卒認定試験合格者には調査書がないため、一般入試を主な受験方法として選ぶ場合が多くなります。
また、大学入試に失敗した場合、通信制高校卒業者は「高卒」という学歴があるため、就職などの選択肢が広がります。高卒認定試験合格者は、中卒の学歴に高卒認定試験合格が加わるだけなので、選択肢がやや限られる可能性があります。
まとめ|自分に合った選択をしよう
高卒認定試験は出題範囲が限定的で合格点も36点と低く設定されているため、難易度としては高くありません。70%前後という合格率からも、適切な準備をすれば十分合格可能な試験だといえるでしょう。
独学でも過去問や適切な教材を活用すれば合格できますが、自己管理能力や学習意欲が求められます。
一方、通信制高校は最終学歴が「高校卒業」となり、教員のサポートも受けられるというメリットがあります。特に、将来の就職や進学を考える場合、通信制高校を選択する方が有利になるケースも多いでしょう。
大学などへの進学を考えている方は、自分の目標や状況に合わせて、高卒認定試験と通信制高校のどちらが適しているか検討してみてください。
短期間で資格を取得したい場合は高卒認定試験、しっかりとした学習環境や「高校卒業」という学歴が欲しい場合は通信制高校がおすすめです。
通信制高校なら通常の学習に加えて学校行事や友人との交流も経験できるため、学力だけでなく、社会性も身に付けることができるでしょう。
また、過去に在籍していた高校で取得した単位や期間を生かせる場合は、通信制高校で1年程度での卒業も可能になります。
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