定時制高校と通信制高校の違いとは?授業や学習・通学頻度を比較
2025.08.26
高校卒業資格を取得する方法は、全日制高校だけではありません。
現在では、より柔軟な学び方ができる「定時制高校」や「通信制高校」も広く認知されるようになりました。
しかし、定時制高校と通信制高校という言葉は聞いたことがあっても、それぞれの特徴や授業の進め方、通学のスタイルなど、具体的な違いまでは分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、定時制高校と通信制高校の違いを徹底的に比較し、それぞれの授業形態や通学頻度、学習スタイルなどについて詳しくご紹介します。
自分に合った学びのスタイルを見つけるために、進学を検討している方や、転入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
定時制高校と通信制高校の特徴とは?
通信制高校や定時制高校と聞いても、その違いや具体的な特徴がわかりづらいと感じる方も多いかもしれません。
まずはそれぞれの高校の基本的な特徴について整理し、全日制高校との違いも交えながらご紹介します。
定時制高校の特徴
定時制高校は、主に夕方から夜間にかけて授業を行うスタイルの高校で、全日制高校のカリキュラムをベースに、より短時間で学習が進むように設計されています。
働きながら学ぶ人や、昼間に別の活動をしたい人に向いており、教師から直接授業を受けられるため、サポートを受けながら学習できる点が強みです。
また、通学の必要があるため、生活のリズムを整えやすいというメリットもあります。
通信制高校の特徴
通信制高校は、自宅での学習を中心に単位を修得するスタイルで、通学は年間数日のスクーリングのみという学校が多いのが特徴です。
学習スタイルに自由度があり、インターネットを活用してオンラインで学べる環境が整っているため、時間や場所にとらわれずに学習を進めたい人に最適です。
自学自習が中心となるため、自己管理能力が求められますが、自分のペースで高校卒業を目指すことができます。
定時制高校と通信制高校の共通点
定時制高校と通信制高校は、異なる指導形態の学校ですが、共通している点も多くあります。
ここでは両者に共通する仕組みや目的を簡単にご紹介します。
・どちらも高校卒業資格の取得を目的としている
・文部科学省の学習指導要領に基づいたカリキュラムを採用している
・卒業には、原則として3年以上の在籍と74単位の修得が必要
・高校中退者や社会人、子育て中の方など多様な背景の人が通っている
このように、定時制高校と通信制高校はいずれも柔軟な学びを提供する制度として、幅広いニーズに対応しています。
そのうえで、生徒自身がどんな目的で、どんなスタイルの学校に通いたいのかといった部分から定時制高校と通信制高校どちらに通うか検討するようにしましょう。
定時制高校と通信制高校の違いを比較!
定時制高校と通信制高校は、高校卒業資格を取得するためという共通点がありますが、取得までの授業や学習スタイル、通学の頻度、卒業までの年数、学費などには大きく違いがあります。
それぞれ項目に分けて違いをご紹介していきます。
授業や学習スタイルの違いを比較
定時制高校と通信制高校の授業や学習スタイルの違いは以下の通りです。
高校 |
学習スタイル |
学習場所 |
---|---|---|
定時制高校 | 教師による対面授業 | 学校 |
通信制高校 | 教材とレポートを使用した自学自習 | 任意 |
定時制高校と通信制高校は、学習指導要領をもとに各教科の目標や教育目標を決めているため、学習内容は同じです。
定時制高校は、全日制の生徒が下校した後、同教室を使い教師による一斉授業を行います。
一方で、通信制高校は、通常学校には通いません。
授業動画や教科書で学び、それらを基に配布されたレポートを作成し、学校に提出するというスタイルになっています。
定時制高校は決められた時間に行われる集団授業、通信制高校は好きな時間に学習ができる自学自習といった違いがあります。
登校頻度や学習する時間帯の違い
定時制高校・通信制高校の登校頻度や学習する時間帯は以下の通りです。
高校 | 登校頻度 | 時間帯 |
---|---|---|
定時制高校 | 週5日 | 「夜間制」「昼間二部」「三部制」のいずれか (1日4時間程度) |
通信制高校 | 年間20日程度 (学校により異なる |
任意 |
定時制高校は全日制高校と同様に、土日祝日・長期休暇を除き、毎日登校して授業を受けます。
夕方ごろに登校する「夜間定時制」が主流であり、授業時間は4時間程度です。
学校によっては、午前と午後の2つの時間帯に分けて行う「昼間二部」や、午前、午後、夜間の3つの時間帯に分けて授業を行う「三部制」を採用しているところもあります。
一方で通信制高校では普段は自宅など任意の場所で学習しますが、年に数回、スクーリングと呼ばれる通学が必要になります。
スクーリング回数は学校によって異なり、週3〜5回・月1〜2・年4回程度とさまざまです。
なるべく通学の頻度を減らしたいという場合には通信制高校を選択するのが良いでしょう。
卒業までの年数の違い
共通点でもご紹介した通り、定時制高校も通信制高校も卒業までには74単位の修得が必要とされています。
しかしながら、学習スタイルの違いによって、卒業までの目安年数に違いがあります。
高校 | 卒業条件 | おおよその卒業年数 |
---|---|---|
定時制高校 | ・36ヶ月以上の在籍期間 ・74単位以上の修得 |
4年 |
通信制高校 |
・36ヶ月以上の在籍期間 ・74単位以上の修得 ・30単位時間以上の特別活動への出席 |
約3年 |
定時制高校の卒業に必要な年数は、原則として4年です。
これは、定時制高校の1日の授業時間が全日制高校よりも短いため、卒業に必要な単位を修得するのに時間がかかってしまうからです。
一部の定時制高校では、単位制を導入しており、3年で卒業することも可能です。
この場合、1日に多くの授業を受けることで、必要な単位を効率的に修得できます。
一方で、通信制高校は、最短で3年で卒業とされています。
学校教育法で3年以上の在籍が定められているため、3年未満で卒業することはできませんが、単位を前倒しで修得することは可能です。
また、単位の修得が完了すれば卒業できるため、学習を自分のペースで進めたい方は、3年以上かけて卒業を目指す選択もできます。
毎日通う自信がない。自分の学習ペースで学びたいが、高校は確実に卒業したい。という場合には猶予のある通信制高校の選択も良いかもしれませんね。
学費や入学金の違い
定時制高校・通信制高校の学費の目安は以下の通りです。
公立の定時制高校や通信制高校は学費が安く、私立は高くなる傾向があります。
私立の定時制・通信制高校は授業料が数千円〜1万円と開きがあるため、学校によって学費が大幅に変わります。
定時制高校・通信制高校でも高等学校等就学支援金制度の給付を通じて学費を抑えることができます。
高等学校等就学支援金とは、高校などの授業料の一部、もしくは全額を国が支援する制度です。
一度高校を中退した場合でも、再入学して学び直す際には、状況によって支援を受けられる場合がありますので、学費を抑えたいという場合には入学前に確認しておくと良いでしょう。
卒業後の進路・就職率に違いはある?
高校入学の時点で、自分がどの進路に進むのか決まっている人は少ないかもしれません。
しかし、卒業生がどの進路に進んだのかを知ることで、学校がどの分野に力を入れているのかや、学校生活のイメージをつかみやすくなります。
ここでは定時制高校と通信制高校での進学率や就職率の違いについて紹介します。
定時制高校の卒業後の進路・就職率
定時制高校を卒業した後の進路は、進学が約40%、就職も約40%と、ほぼ同じ割合に分かれるとされています。
定時制高校は「高校卒業資格の取得」を目的とした進路が多いイメージを持たれがちですが、実際には多くの人が大学や専門学校への進学も選んでいます。
ただし、定時制高校での学習内容だけで大学進学を目指すのは簡単ではなく、追加の学習が必要となる場合もあります。
大学進学を希望する方は、塾や予備校の利用なども視野に入れておくと安心です。
通信制高校の卒業後の進路・就職率
通信制高校の場合、大学や専門学校などに進学する人は約40%、就職する人は約20%、その他が約40%とされています。
就職する人が進学する人の半分程度と下回るのは、学業以外の活動をしている人や、主婦の方などがその他に分類されるため、このような数値になったと考えられます。
通信制高校に通っているからといって進路が限定されるわけではなく、重要なのはどのように学び、どんな経験を積んだかという点です。
実際に多くの方が大学や専門学校に進学しており、高校卒業資格を取得していれば、中卒と比べて就職活動でも有利です。
定時制高校のメリット・デメリット
それぞれの特徴をご紹介したうえで、ここからはメリットとデメリットについてご紹介します。
定時制高校には以下のメリット・デメリットがあります。
メリット
- 時間の自由度が高い
- さまざまな年代の人と関われる
デメリット
- 途中退学率が高い
- 大学進学に対応しづらい傾向がある
定時制高校のメリット①学校生活のリズムがつきやすい
定時制高校のメリットとして、週5日の決まった時間に授業が行われるため、毎日の生活に一定のリズムを持たせやすいことが挙げられます。
特に夕方以降に授業が始まる「夜間部」は、日中にアルバイトや家事、趣味の活動を行いながらも、生活の中に「通学」の習慣を取り入れることができます。
通信制高校のように自宅学習中心だと生活のペースが乱れがちですが、定時制高校では“学校に行く”という行動を軸に、安定した生活を築きやすいメリットがあります
定時制高校のメリット②さまざまな年代の人と関われる
定時制高校には、10代が全体の過半数以上を占め、そのほかに、パートや働きながら通う20代、30代、外国籍の人などさまざまな背景を持つ生徒が在籍しています。
そのため、今まで周りにいなかった価値観や考え方を持った人と話す機会が増えます。
無理に話す必要はありませんが、定時制高校で一緒に過ごす同級生と会話を重ねることで、あなたに新たな気付きを与え、これからの人生の役立つはずです。
定時制高校のデメリット①途中退学率が高い
定時制高校は、仕事をしながら通学できる点がメリットです。
その一方で、体調や時間管理が十分でないと休むことが多くなり、そのまま途中退学してしまうケースも少なくありません。
通学する必要があるため、自身のペースで学習できるわけではないことを理解しておくべきでしょう。
なお、全日制の途中退学率が2%以下に対して、定時制の途中退学率は10%以上とされています。
途中退学の理由は、進路変更や不適応が多くなっているため、毎日通学する環境に慣れず、他の学校への転校や、仕事に集中するという人も多いようです。
定時制高校のデメリット②大学進学に対応しづらい傾向がある
学校にもよりますが、定時制高校は全日制高校と比較すると進学に対するサポートが薄い傾向にあります。
これは、定時制高校の学習カリキュラムが「高校卒業資格の取得」が中心のため、大学受験レベルの深い授業は行われないことが多いからです。
定時制高校は全日制高校より授業時間が短く、進度も遅いです。
そのため、大学進学を希望する場合は、塾や予備校なども活用して勉強する必要があります。
通信制高校のメリット・デメリット
続いて、通信制高校のメリットとデメリットについても見ていきましょう。
通信制高校は全日制高校や定時制高校と比較したときに異なる部分が多く、進学先として選ぶべきか悩む方も多いです。
学校を選ぶ際は、メリットとデメリットをしっかり把握しましょう。
メリット
- 自由な勉強スタイル
- 自分のペースで学習を進められる
デメリット
- 学習計画通りに進まない
- 友人や教師との関わりが希薄
通信制高校のメリット①自由な学習スタイル
通信制高校の最大の魅力の1つは、時間や場所を問わず学習ができることが挙げられます。
好きな時間から学習を始められるため、働いている方や子育て中の方、夢に向かって何か活動している方など、まとまった時間がとれない方でも無理なく学習できます。
移動中や隙間時間を活用して、毎日少しずつレポートを進めれば、高校を卒業できます。
通信制高校のメリット②自分のペースで勉強できる
通信制高校は毎日登校する必要がなく、カリキュラムを自分で組み立てられるため、自分のペースで学習を進められます。
そのため、勉強に苦手意識のある方や学習スピードが早くない方も、基礎から時間をかけて学び直すことで、徐々に勉強の遅れを取りもどすことが可能です。
また、学習バランスも自分で決めることが可能なため、大学受験を目指すために優先的に受験科目に時間を使い、他の科目は単位を落とさない程度に抑えるといった勉強方法も可能です。
通信制高校のデメリット①学習計画通りに進まない
通信制高校は自学自習が基本になります。
毎日登校することがないため、自分で学習計画を立てる必要があります。
しかし、学習計画を立てても予定通りに進めるのが難しく、思っていたペースで進まないかもしれません。
後でまとめてやろうとしても、いつの間にか大量のレポートがたまってしまい、手が回らないというケースがよくあります。
「わからないところがあっても、すぐに質問できない環境であるため、勉強を進めづらい。」
このように勉強に不安がある方には「サポート校」をおすすめします。
サポート校では、コーチング担任が理解度に合わせて指導や、スケジュール管理のサポートをしてくれます。
勉強の仕方が分からない方や、勉強以外にも不安がある方は、無料の「オンライン説明会」に参加してみてください。
まずは説明会に参加し、サポート校の利用も検討してみてください。
通信制高校のデメリット②友人や教師との関わりが希薄
通信制高校では対面での授業が少ないため、全日制や定時制高校と比べて友達や教師とコミュニケーションをとる機会がほとんどありません。
しかし、すべての学校で登校日数が限られているわけではありません。通信制高校の中には週4〜5日の登校を設定できる学校もあります。
通信制高校でも友人を作ったり、教師とコミュニケーションをとったりしたい場合は、登校日数が多い学校を選択するようにしましょう。
また、サポート校に通うことで、教師のサポートを十分に受けることができたり、同じ境遇の友人たちとコミュニケーションをとることができるようになります。
少しでも友人や教師との関わりを増やしたいという方は、サポート校への通学も検討してみてください。
定時制・通信制どちらに向いている?
定時制高校と通信制高校の特徴や違い、メリットやデメリットについて紹介したところで、実際にどういった人が向いているのか、それぞれの強みとともにご紹介します。
どちらの学校に行くべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
定時制高校が向いている人
定時制高校に向いている人は以下のような人が当てはまります。
- 通学圏内に定時制高校がある人
- お昼に働きたい人
- 介護や育児がある人
- サポートを受けながら卒業したい人
- 「学校に通う」という形でモチベーションを保ちたい人 など
定時制高校は各都道府県に1校から数校しかないため、定時制高校を希望しても通える範囲に学校があるかは確認しておくようにしましょう。
定時制高校は授業が夜間中心のため、昼間の時間を自由に使えます。
昼間に仕事やアルバイト、趣味や技術を磨く時間を確保できるのは最大の特徴と言えます。
また、授業形態は教師による対面授業のため、通信制高校のように自学自習に自信がないという方や一部強制力があった方が集中できると言った方におすすめです。
毎日学校に通うことで、生活スタイルを確立しやすく、周りの生徒と切磋琢磨することで勉強のモチベーションを維持してくれます。
通信制高校が向いている人
通信制高校に向いている人は以下のような人が当てはまります。
- 夢や目標に向かって活動している人
- 忙しく働いている人や子育て中の人
- 海外で生活している人
- 病気や体調がすぐれない人 など
通信制高校は自分で勉強する日を決められるため、まとまった時間を確保できない人におすすめです。
忙しい毎日を過ごしている人でも、夜の時間や隙間時間を利用して勉強を続ければ卒業することは十分可能です。
卒業までにスクーリングが必要にはなりますが、数日間など短期間の通信制高校もあるため、海外で生活している人や病気や体調不良で毎日登校が難しい方にもおすすめです。
定時制高校と通信制高校の違いを比較|まとめ
定時制高校と通信制高校の違いについてご紹介しました。
どちらの学校にも全日制とは違う特徴とメリット・デメリットがあります。
学校選びの際には、オープンキャンパスや入学説明会に参加したり、在校生や卒業生の声を聞いたりなどして、自分に合った学校を見つけることが大切です。
「ここなら頑張れそう」「成長できそう」と思える学校を選びましょう。
おすすめコラム